冠動脈の裂傷


image47心臓は、大部分が心筋という筋肉でできている臓器です。
心臓は、心筋が収縮、拡張を繰り返すことにより、1分間に約5リットルもの血液を全身に送り出すポンプの役割を果たしているのです。

当然ながら、心筋も、絶えず酸素が供給されないと、十分な働きをすることができません。
心筋は、その他の筋肉と比較して約3倍の酸素を必要としており、冠動脈により、優先的に新鮮な動脈血が供給されるようになっています。
冠動脈は、大動脈の根元より左右1本ずつ分岐し、心筋の表面を冠のように覆っています。

頻繁に発症するのではありませんが、交通事故や高所からの転落で、胸部に強い衝撃を受けたとき、冠動脈が裂傷することがあります。
冠動脈の裂傷により、心筋に十分な血液を送れなくなると胸部痛が出現、この状態を狭心症と言い、
さらに、心筋に全く血流を送れなくなると、心筋は働けなくなり、壊死します。
心筋が壊死した状態を心筋梗塞と言います。

冠動脈の裂傷では、心タンポナーデなど重篤な事態に至ることも予想されますが、縫合やバイパス手術が実施されとときは、冠動脈そのものに障害が残存することはありません。

ただし、冠動脈の狭窄または末梢の閉塞が残存し、心筋虚血を来し、胸痛が生ずることが想定されるときは、狭心症に準じて、障害が審査されています。
また、冠動脈損傷の時点で、心筋への血流が途絶え、心電図、血液生化学検査または画像所見により心筋壊死が認められるときは、心筋梗塞に準じて、障害が審査されています。

冠動脈の裂傷における後遺障害について

1)これまでの経験則では、冠動脈の裂傷・破裂で大きな後遺障害を残した例はありません。

2)狭心症は、冠動脈の狭窄や閉塞により、一過性の心筋虚血を来し、胸痛発作を起こす症候群です。
狭心症となると、その後も狭心症状、冠動脈の狭窄や閉塞による心筋虚血に基づく胸痛が再発することが多いと報告されています。
狭心症発症後は、薬物治療、経皮的冠動脈形成術、冠動脈バイパス術などの治療が行われていますが、治療が実施されても、改善程度にはバラツキがあります。

3)狭心症状が軽度なものは、11級10号
日常の身体活動で狭心症状が出現することはないが、通常より負荷の大きい労作業を行うときに、狭心症状を起こすとは、運動耐容能がおおむね8METsを超えるものであって、具体的には、歩行や階段上昇では狭心症状はないが、それ以上激しいか、急激な労作業では、狭心症状をあらわすもの、

①末梢の冠動脈の狭窄や閉塞などが画像所見等により認められること、
または、心筋に虚血を生じることが発作時心電図、核医学検査等により認められること、
②発作時に上記虚血により胸痛が生じると医師により認められること

運動耐容能がおおむね8METsを超えるもので、上記の2つの要件を満たすものは、11級10号が認定されています。

4)狭心症状が中等度なものは、9級11号
中等度とは、安静や通常の身体活動では支障を生じないものの、通常の身体活動より強い身体活動で狭心症状を起こすとは、運動耐容能がおおむね6METsを超えるものを言い、急ぎ足での歩行や階段上昇、坂道の登り等の身体活動を行うときに、狭心症状を呈するものをいう。

①末梢の冠動脈の狭窄や閉塞などが画像所見等により認められること、
または、心筋に虚血を生じることが発作時心電図、核医学検査等により認められること
②発作時に上記虚血により胸痛が生じると医師により認められること

運動耐容能がおおむね6METsを超えるもので、上記の2つの要件を満たすものは、9級11号が認定されています。
なお、狭心症状が中程度を超えるものは、治療が必要であり、症状固定とはなりません。

5)心筋梗塞とは、冠動脈が閉塞し、冠動脈から血液供給を受けていた心筋組織が壊死したもので、血液供給を失った心筋は、内膜側から壊死が始まり、次第に外膜側まで広がると報告されています。
壊死した心筋は、収縮することができなくなり、壊死した部位と、その範囲に比例して、心臓のポンプ機能=心機能が低下することになります。
また、心筋梗塞発症後には、様々な不整脈が出現することも報告されています。

6)心筋に壊死を残し、心機能=運動耐容能の低下が軽度と認められるものは11級10号、
心電図、血液生化学検査または画像所見で、心筋の壊死が認められることが前提です。

心機能の低下による運動耐容能の低下が軽度とは、心筋に壊死を残しているが、身体活動に制限はなく、通常の身体活動では心筋梗塞による疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛を生じないと医師により認められるもので、運動耐容能がおおむね8METsを超えるものであり、平地を急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上るという活動に支障がないものを言い、以下の3つの要件のいずれも満たさなければなりません。

①心機能の低下が軽度にとどまり、現在の臨床所見に将来にわたって著変がないと認められること、
②危険な不整脈が存在しないと医師により認められること、
③残存する心筋虚血が軽度にとどまると医師により認められること、

7)心筋に壊死を残し、心機能=運動耐容能の低下が中程度と認められるものは9級11号、
心電図、血液生化学検査または画像所見で、心筋の壊死が認められることが前提条件です。
心機能の低下による運動耐容能の低下が中等度とは、安静や通常の身体活動では支障を生じないが、通常の身体活動より強い身体活動で心筋梗塞による疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛を生じると医師により認められるもので、運動耐容能がおおむね6METsを超えるものであり、平地を健康な人と同じ速度で歩くのは差し支えないが、心機能の低下のため平地を急いで歩くと支障があるものを言います。
これらは、運動負荷試験などで立証しています。

8)心筋梗塞後にペースメーカを植え込んだときは、9級11号、

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ペースメーカを植え込んだことによる障害と心筋梗塞後の障害とでは、内容、性質を異にしており、、これらの等級は併合されています。
心筋梗塞後に出現した不整脈治療のためペースメーカを植え込んだものは、9級11号、
心筋に壊死を残し、心機能=運動耐容能の低下が軽度と認められるものは11級10号、
上記は併合され、併合8級となります。

9)心筋梗塞後に、除細動器を植え込んだときは、7級5号、

image49

除細動器を植え込んだことによる障害と心筋梗塞後の障害とでは、内容、性質を異にしており、これらの等級は併合されています。

心筋梗塞後に出現した不整脈治療のため除細動器を植え込んだものは、7級5号、
心筋に壊死を残し、心機能=運動耐容能の低下が中程度と認められるものは9級11号、
上記は併合され、併合6級となります。

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001.部位別の交通事故後遺障害

1.顔(眼・口・耳・鼻)の外傷と後遺障害
眼の仕組みと後遺障害について
眼瞼=まぶたの外傷
外傷性眼瞼下垂 (がいしょうせいがんけんかすい)
動眼神経麻痺 (どうがんしんけいまひ)
ホルネル症候群
外転神経麻痺 (がいてんしんけいまひ)
滑車神経麻痺 (かっしゃしんけいまひ)
球結膜下出血
角膜上皮剥離 (かくまくじょうひはくり)
角膜穿孔外傷 (かくまくせんこうがいしょう)
前房出血 (ぜんぼうしゅっけつ)
外傷性散瞳 (がいしょうせいさんどう)
涙小管断裂 (るいしょうかんだんれつ)
外傷性虹彩炎
虹彩離断 (こうさいりだん)
水晶体亜脱臼 (すいしょうたいあだっきゅう)
水晶体脱臼、無水晶体眼
外傷性白内障 (がいしょうせいはくないしょう)
眼窩底破裂骨折 (がんかていはれつこっせつ)
視神経管骨折 (ししんけいかんこっせつ)
硝子体出血 (しょうしたいしゅっけつ)
外傷性網膜剥離 (がいしょうせいもうまくはくり)
網膜振盪症(もうまくしんとうしょう)
外傷性黄斑円孔(がいしょうせいおうはんえんこう)
眼底出血 網膜出血・脈絡膜出血
眼球破裂 (がんきゅうはれつ)
続発性緑内障 (ぞくはつせいりょくないしょう)
耳の構造
耳介裂創 (じかいれっそう)
耳垂裂 (じすいれつ)
耳鳴り
外傷性鼓膜穿孔 (こまくせんこう)
流行性耳下腺炎 (りゅうこうせいじかせんえん)
側頭骨骨折 (そくとうこつこっせつ)
頭蓋底骨折 (ずがいていこっせつ)
騒音性難聴 (そうおんせいなんちょう)
音響性外傷 (おんきょうせいげいしょう)
鼻の構造、仕組み
鼻骨々折 (びこつこっせつ)
鼻篩骨骨折 (びしこつこっせつ)
鼻軟骨損傷 (びなんこつそんしょう)
鼻の欠損
嗅覚の脱失
口の構造と仕組み
頬骨々折 (きょうこつこっせつ) 頬骨体部...
頬骨弓骨折 (きょうこつきゅうこっせつ)
眼窩底骨折 (がんかていこっせつ)
上顎骨骨折 (じょうがくこつこっせつ)
下顎骨骨折 (かがくこつこっせつ)
味覚障害
嚥下障害
言語の機能障害 反回神経麻痺
特殊例 気管カニューレ抜去困難症
醜状障害
ステム周囲骨折
4.手・腕の外傷と後遺障害
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上腕骨骨幹部骨折(じょうわんこつこつかんぶ...
手の構造
手根骨の骨折 有鈎骨骨折(ゆうこうこつこっせつ)
手根骨の骨折 有頭骨々折(ゆうとうこつこっせつ)
手根骨の骨折 舟状骨々折(しゅうじょうこつ...
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手根骨の骨折 TFCC損傷
手指の各関節の側副靭帯損傷 親指MP関節尺...
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手指の脱臼と骨折 ボクサー骨折
手指の脱臼と骨折 PIP関節脱臼骨折
手指の脱臼と骨折 マレット フィンガー=槌指
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手指の欠損について
骨折の分類
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上腕骨骨幹部骨折(じょうわんこつこつかんぶ...
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肘関節と手関節、橈骨と尺骨の仕組み
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橈骨遠位端骨折、コーレス骨折とスミス骨折
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尺骨茎状突起骨折(しゃっこつけいじょうとっ...
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前骨間神経麻痺 (ぜんこつかんしんけいまひ)
手根管症候群 (しゅこんかんしょうこうぐん)
上腕神経叢麻痺 (じょうわんしんけいそうまひ)
5.胸腹部の外傷と後遺障害
肋骨骨折
肋骨多発骨折の重症例 外傷性血胸
肋骨多発骨折の重症例 フレイルチェスト、F...
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胸腹部臓器の外傷と後遺障害について
肺挫傷 (はいざしょう)
皮下気腫、縦隔気腫 (ひかきしゅ、じゅうか...
気管・気管支断裂 (きかん・きかんしだんれつ)
横隔膜の仕組み
外傷性横隔膜破裂・ヘルニア
心臓の仕組み
心膜損傷、心膜炎 (しんまくそんしょう、し...
冠動脈の裂傷
心挫傷、心筋挫傷 (しんざしょう、しんきん...
心臓・弁の仕組み
心臓、弁の損傷
大動脈について
外傷性大動脈解離 (だいどうみゃくかいり)
心肺停止 (しんぱいていし)
過換気症候群 (かかんきしょうこうぐん)
肺血栓塞栓、肺脂肪塞栓 (はいけっせんそく...
外傷性胸部圧迫症
腹部臓器の外傷
実質臓器 肝損傷 (かんそんしょう)
実質臓器 胆嚢損傷 (たんのうそんしょう)
管腔臓器 肝外胆管損傷 (かんがいたんかん...
実質臓器 膵臓損傷 (すいぞうそんしょう)
実質臓器 膵臓の損傷
実質臓器 脾臓
管腔臓器 胃
外傷性胃の破裂 (いのはれつ)
管腔臓器 小腸
管腔臓器 小腸穿孔 (しょうちょうせんこう)
管腔臓器 大腸
大腸穿孔、大腸破裂
腹壁瘢痕ヘルニア
腹膜・腸間膜の障害
実質臓器 腎臓
腎挫傷、腎裂傷、腎破裂、腎茎断裂
尿管、膀胱、尿道
尿管外傷 (にょうかんがいしょう)
膀胱の外傷
尿道の外傷
外傷性尿道狭窄症
神経因性膀胱
尿崩症 (にょうほうしょう)
脊髄損傷
実質臓器 副腎の損傷
急性副腎皮質不全 (きゅうせいふくじんひし...
男性の生殖器
女性の生殖器
横隔膜ペーシング
7.足の外傷と後遺障害
足の構造と仕組み
足趾の骨折 基節骨の骨折
足趾の骨折 中足骨骨折
足趾の骨折 第5中足骨基底部骨折=下駄骨折
足趾の骨折 ジョーンズ骨折、Jones骨折...
足趾の骨折 種子骨の骨折
足根骨の骨折 外傷性内反足(がいしょうせい...
右腓骨遠位端線損傷
右足関節果部骨折
足根骨の骨折 距骨(きょこつ)骨折
足根骨の骨折 右踵骨不顕性(みぎしょうこつ...
足根骨の骨折 距骨々軟骨(きょこつこつなん...
足根骨の骨折 足根管症候群(そっこんかんし...
座骨・腓骨・骨神経麻痺って、なに?
坐骨神経麻痺(ざこつしんけいまひ)
脛骨神経麻痺(けいこつしんけいまひ)
腓骨神経麻痺(ひこつしんけいまひ)
深腓骨(しんひこつ)神経麻痺=前足根管(せ...
浅腓骨(せんひこつ)神経麻痺
足根骨の骨折 足底腱膜断裂(そくていけんま...
足根骨の骨折 足底腱膜炎(そくていけんまくえん)
モートン病 (MORTON病)
足根洞症候群(そっこんどうしょうこうぐん)
アキレス腱断裂
アキレス腱滑液包炎
足関節不安定症
変形性足関節症
SLAP損傷=上方肩関節唇損傷
突き指について
腓腹筋断裂 肉離れ
足関節に伴う靱帯損傷のまとめ
足関節離断性骨軟骨炎(あしかんせつりだんせ...
脛・腓骨々骨幹部開放性骨折(けい・ひこつこ...
下腿のコンパートメント症候群
膝関節の仕組み
膝関節内骨折 骨顆部骨折(けいこつかぶこっせつ)
脛骨と腓骨の働き
脛骨顆間隆起骨折(けいこつかかんりゅうきこ...
腓骨骨折
膝窩動脈損傷(しつかどうみゃくそんしょう)
膝蓋骨々折(しつがいこつこっせつ)
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)
膝蓋骨々軟骨々折とスリーブ骨折
半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
ACL前十字靱帯損傷(ぜんじゅうじじんたい...
PCL 後十字靱帯損傷(こうじゅうじじんた...
MCL内側々副靱帯損傷(ないそくそくふくじ...
LCL外側々副靭帯損傷(がいそくそくふくじ...
PLS膝関節後外側支持機構(ひざかんせつこ...
複合靭帯損傷(ふくごうじんたいそんしょう)
変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)
足根骨の骨折 踵骨(しょうこつ)骨折
膝離断性骨軟骨炎(しつりだんせいこつなんこ...
膝蓋前滑液包炎(しつがいぜんかつえきほうえん)
大腿骨顆部骨折(だいたいこつかぶこっせつ)
大腿骨々幹部骨折(だいたいこつこつかんぶこ...
右腓骨筋腱周囲炎(みぎひこつきんけんしゅう...
大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)
大腿骨転子部・転子下骨折(だいたいこつてん...
股関節の仕組み
股関節後方脱臼・骨折(こかんせつこうほうだ...
股関節中心性脱臼(こかんせつちゅうしんせい...
外傷性骨化性筋炎(がいしょうせいこっかせい...
骨盤の仕組み
肉離れ、筋違いと捻挫について
股関節唇損傷
変形性股関節症
仙髄神経麻痺
足関節果部脱臼骨折、コットン骨折
下腿骨の切断、足趾の切断
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9.死亡事故

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12.遷延性意識障害

該当する情報がございません。

財産分与について⑪ - 弁護士の井筒です。   本日は、扶養的財産分与について説明していきます。  ...2017.8.8