頭部に直接の衝撃が加わり、硬膜下・くも膜下血腫、脳挫傷、びまん性軸索損傷などの脳損傷では、通常、6時間以上の昏睡を含む意識障害が生じ、CT・MRI画像においても、脳の器質的損傷を捉えることができ、これを頭部外傷後の高次脳機能障害と呼んでいます。
この16年間、多数例を経験しており、交通事故110番が立証面で、最も得意としている分野です。

スクリーンショット 2016-06-13 19.49.51

1であれば、高次脳機能障害の立証に、苦労はありません。
2でも、なんとか頑張って立証に漕ぎ着けます。
3となれば、高次脳機能障害の認定は極めて困難となります。
4は論外で、高次脳機能障害として審査されることはなく、非該当です。
軽度脳損傷、MTBIは4に該当し、高次脳機能障害として評価されていません。

MTBIとは、Mild Traumatic Brain Injury、つまり軽度脳外傷の略語で、外傷性のない、もしくは希薄な頭部の受傷により、脳障害を残すものとしておおむね認識されています。

症状の臨床実績は比較的新しく、90年代、湾岸戦争で爆風にさらされた帰還兵に一定の認知・記憶・情動障害を残す例があり、TBI、外傷性脳損傷の診断名がクローズアップされました。
それらには、必ずしも脳損傷、脳外傷が認められないケースも多数含まれており、M、マイルドをつけてMTBIという呼び方で一般化されました。
これはベトナム戦争の帰還兵が、PTSD、心的外傷後ストレス障害と診断され、傷病名が一般化された経緯によく似ています。

高次脳機能障害は、脳の器質的損傷の存在が前提であり、MTBIとは一線を画します。
したがって高次脳機能障害が疑われる障害を残しながら脳外傷がない為、MTBIと位置づけられる被害者が少なからず存在しているのです。
当然、自賠責や労災の基準に満たないこれらMTBI被害者に、後遺障害等級の認定はありません。
平成22年9月の東京高裁判決で障害を認める判決がでたとされましたが、判旨をみるとMTBIが障害認定されたとは読み取れません。
この判決も周囲の誤解・曲解を呼び、依然として灰色的な存在が続いています。
高次脳機能障害をサポートする我々にとって、まさに奥歯に刺さった棘のようなものです。

戦地からの帰還兵には、賠償問題もついてまわり、なにかと障害が騒がれています。
今回の高次脳機能障害委員会でもMTBIの定義と扱いについて相当のボリュームを割いています。
そこで、WHOにおけるMTBIの定義について確認してみます。

1)WHOによるMTBIの定義
WHO 共同特別専門委員会におけるMTBIの診断基準
MTBIは、物理的外力による力学的エネルギーが頭部に作用した結果起こる急性脳外傷である。
臨床診断のための運用上の基準は以下を含む
①以下の一つか、それ以上、
混乱や失見当識、30分あるいはそれ以下の意識喪失、24時間以下の外傷後健忘期間、そして、あるいは一過性の神経学的異常、たとえば局所神経徴候、けいれん、手術を要しない頭蓋内病変、
②外傷後30分の時点、あるいはそれ以上経過しているときは、急患室到着の時点で、グラスゴー昏睡尺度得点は13~15

image115

ちょっとした脳震盪でも、MTBIを発症する?

上記のMTBI所見は、薬物・酒・内服薬、他の外傷とか他の外傷治療、例えば、全身の系統的外傷、顔面外傷、挿管など、他の問題、例えば心理的外傷、言語の障壁、併存する医学的問題、あるいは穿通性脳外傷などによって起きたものであってはならない。

2)平成23年新認定システム ~ 委員会における専門医の意見
続いてMTBIについて、今委員会における専門医の意見を検証します。

片山医師の意見陳述
片山医師は脳神経外科学が専門であり、当委員会の検討対象となっている1回限りの軽症頭部外傷により遷延する重篤な症状あるいは障害が発生することがあるかという点について説明を行った。

課題1
1回だけのMTBIにより、遷延、3カ月以上する重篤、社会生活が困難な症状あるいは障害が発生することがあるのか?

受傷直後から数日ないし数週間までは、頭痛やめまいなどの愁訴や、記憶障害および注意障害、不安および抑うつなどの症状が持続することがある。
これらの症状は、受傷後しばらく脳の機能的障害および器質的障害の影響を受けるために起きると考えられる。
しかし、これらの症状は徐々に軽快し、一般的には3カ月以内に消失する。
ほとんどが受傷後3~12カ月以内に回復する。
ただし、一部の患者ではこれらの症状が遷延したり遅発したりすることがある。

コメント
原因について、「器質的損壊」 には言及しないものの、「器質的障害」 の影響としているところに注目しなければなりません。
しかし、症状は一部の例外を除いて3~12カ月以内に回復する、としているのです。
あくまで一過性の症状であると捉えています。
では長く症状が続く場合、その原因は?

課題2
現実に症状の遷延や遅発の事例は、脳損傷に起因するものといえるか?

遷延ないし遅発する症状の原因を、脳の器質的障害=脳損傷に求めることはできない。
遷延ないし遅発する症状には、脳損傷とは関係のない要因が絡んでいると考えられている。
これには、身体的には疼痛など、精神的には外傷後ストレスや不安ないし抑うつ、人格的には行動性向など、社会的には家族や職場などでのストレス、訴訟や補償などの要因が含まれている。

しかし、軽症頭部外傷による脳の機能的障害ないし器質的障害(脳損傷)による症状が消失する前に、これらの要因が絡むことによって、症状が遷延したり遅発したりしたときには、軽症頭部外傷を原因とする症状と見倣すべきであるという考え方もある。

コメント
脳損傷であることをきっぱり否定しています。
他の痛みから派生する、精神的なもの、その人の性格や被害者意識が原因であると分析しています。
また、心因性の障害であるとしても、長引くその症状のきっかけとなったとの見方もあります。
これは解釈論であって白黒つく話ではありません。
いずれにしても、脳損傷のない脳障害はない! ハッキリ断定しています。

課題3
特に、受傷による意識障害がなく、形態画像でも脳損傷を検出できないようなときはどうか?

意識障害や記憶障害などを起こしていなければ、器質的脳損傷を起こすことはないと考えられる。
このようなとき、遷延ないし遅発する症状の原因を、脳の器質的脳損傷に求めることはできない。

コメント
意識障害がなく、健忘(記憶障害)もなければ、脳損傷が存在する筈がない。
したがって、症状の継続の原因は脳損傷ではない。
この見解は、全くぶれていません。
現状の高次脳機能障害の認定基準とは一線を画すものということになります。

脳損傷の有無によって高次脳機能障害とMTBIは明確な区別がされています。
この認識は変わっていません。
そして「一過性であること」、「回復するもの」、「精神的なもの」 と断定しているのです。

3)平成23年9月の高裁判決
今委員会でも無視することはできず、以下のようにまとめられています。
D委員、E委員による意見発表
明確な意識障害や画像所見がなく、後遺障害9級、ただし30%の素因減額を適用を認定した裁判例、東京高裁平成22年9月9日判決、H22年(ネ)第1818号、同第2408号について、報告がなされた。

①本件事案について、一審の東京地裁は事故で脳外傷が生じたことを否定して後遺障害14級を認定したが、東京高裁はこれを認め、後遺障害9級を認定した上で、損害賠償額の算定において、「心的要因の寄与」 を理由として30%の素因減額を行っている。

コメント
つまり、東京高裁判決では、画像上明らかではないが、なんらかの脳外傷があったのだろうと推論をもって障害の存在を認めています。
しかし、この認め方も灰色で、心因性の影響も捨てきれず、損害額の70%だけを認めたのです。
これを、支援団体は、MTBIの障害認定に風穴が空いたと歓喜していますが、私は、原因不明ではあるが、現状の障害の重篤度を考慮した結果であって、MTBI自体の障害認定はしていないと、受け止めています。

②東京高裁は因果関係の判断にあたり、最高裁昭和50年10月24日判決、ルンバール事件判決を引用しています。同最高裁判決は、因果関係を判断する上で、自然科学的な証明まで求めなくて良いことを述べたものである。

東京高裁が因果関係の判断に関する最高裁判決を引用した上で判断した点と、損害額の算定において、「心的要因の寄与」 を理由とする素因減額、最高裁昭和63年4月21日判決参照を行っている点とを考え合わせれば、東京高裁は、脳に器質的損傷が発生したか否かという点、被害者の訴える症状の全てが脳の器質的損傷によるものか否かという点の双方について、悩みながら判断したという印象を受ける。

コメント
自然科学的な証明を画像所見と置き換えるなら、これは画期的な判断です。
しかし引用した最高裁判例は35年前のルンバール事件で、これは医療過誤、医療事故における医師の治療行為の正当性が争われたものです。
ここからの引用は苦し紛れ、強引さを否めないと考えられるのです。
医学的な判断をする=裁判官の苦悩は毎度のことで、医師が理解できないものを悩みながら、判断しているのです。

③東京高裁は、事故直後に強い意識障害がなくても、脳外傷は生じうるとした。
この点について加害者側は、事故後にきちんと事故状況の説明をしているし、ましてや自分で車を運転して帰っているのだから、意識障害はないだろう”と主張したが、高裁は、だからといって脳外傷が生じていないとは言えないと判断している。
しかしながら、脳外傷の有無に関する東京高裁判決の論理展開は、「提出された診断・検査結果の内容と被害者側医師意見書を考えると器質性の脳幹損傷が起こった。」 というのみであり、他方、加害者側から出てきた意見書については単純に、「採用できない。」 と否定するだけであって、脳外傷の判断における医学的意見の採否の理由は十分に説明されておらず、また、被害者に発生した神経症状や所見、被害者側が主張するものについても、どう評価すべきかの検討が十分ではないと思われる。

コメント
本判旨では、意識障害なしの証拠不十分でも実際の症状、治療経過、医師の診断によって脳損傷が推定できるとし、「事故直後、症状がなかった。」 から脳障害はないと主張する被告の反論を採用しなかったにとどめています。
したがって、MTBIの障害性には、なんらの結論も出していません。
原告は上告すると聞いています。
最高裁で決着がつくのか? 再逆転判決、やはり障害はないとなるのか? 注目しているところです。

4)MTBIのまとめ
脳外傷の画像所見がなくても、脳損傷はあり得るのか?
意識障害がなくても、脳損傷はあり得るのか?

これら2つの問題は、今もなお、明解な結論が出ていません。
現状では、画像所見・意識障害がなければ、原則、脳損傷はないと診断されています。
先の高裁判決も、極めて限定的に、被害者救済の見地から判示したもので、今後、同様の裁判が積み上げられるとしても、認定されることが増加するとは考えられません。

image105

踵=踵骨、距=距骨、舟=舟状骨、1~3楔=1~3楔状骨、立=立方骨
中足1~5=中足骨1~5、基=基節骨、中=中節骨、末=末節骨
種子骨は母趾中足骨の先端の足底面に配置されています。

足部は、リスフラン関節とショパール関節によって、前足、中足、後足部に分類されています。
前足部は、末節・中節・基節骨と中足骨、中足部は3つの楔状骨、舟状骨、立方骨で、後足部は、腓骨と踵骨で構成されています。

足関節は、かかとの上にある骨、距骨、スネの骨、骨の外側に並行する腓骨、これらの3つの骨で構成されており、主に、つま先を上下に向ける動きに関わっています。

関節表面は軟骨と呼ばれる弾力のある組織で覆われ、足関節周囲は、多くの関節や強靱な靱帯に囲まれていて、衝撃に強い仕組みとなっています。

次に、アーチの機能です。
足部のアーチは、縦と横の2種類で、アーチは、骨の配列と靭帯、そして足底筋膜で保持しています。

image113

起立したときに、接地しない足底の部分を土踏まずと呼びますが、足底部分は、全面が床に接地しているのではなく、中足部を頂点として縦に2つと、横に1つの弓状に張ったアーチを形成しています。
余談ですが、人は、生まれたときは扁平足ですが、3~4歳頃からアーチが出現するのです。

足のアーチには、以下の3つの機能があります。
①足を蹴りだす力、バネの機能、
②衝撃の吸収するクッションの機能、
③足底の筋肉や神経を保護する機能、

image114

雑学ですが、足の爪は、指先の表皮が角化したもので、指の末端を保護しています。
爪は毎日成長し、手指では1日に0.1mm、足では、手指の半分程度、0.05mm伸びています。

image107

足関節は、骨と腓骨で形成されるソケットに、距骨がはまり込む構造となっています。
距骨の下後方に位置する踵骨、かかとは、骨、腓骨と靭帯でつながっており、広義には、足関節は、骨、腓骨、距骨、踵骨の4つの骨で構成され、主に、つま先を上下に向ける動きに関わっています。

image101

関節表面は軟骨と呼ばれる弾力のある組織で覆われ、足関節周囲は、多くの関節や強靱な靱帯に囲まれていて、衝撃や負担に強い仕組みとなっています。

足関節では、骨と腓骨が距骨をおさえる働きを補助するように、くるぶしの上の腓関節をしっかり固定してやると、捻挫の危険性から回避できると言われています。
トレッキングシューズをイメージして頂くと理解が早まります。

image108

足関節を構成する骨のうち、距骨は踵側からつま先側へ広がる台形となっています。
この骨形状は、距骨が後方へ動くのを抑制し、前方へ動きやすい状態を作り出しているのです。
そして、前距腓靱帯は、距骨が前方へ動くのを止めているのです。

スクリーンショット 2016-06-13 19.49.33

足首は多くの関節の組み合わせから構成されており、その運動は複雑です。
底屈・背屈を基本に、内転と外転、回内と回外といった複数の動きが無意識のうちに組み合わさって、内返し・外返しという足の動きを形作ります。

ヒトの足は、立つ、歩く、走ることを目的としており、その機能に合致する構造となっています。
人は、平均的には60kgの体重を載せ、2本の脚で立って歩行し、一生に地球の周囲を4~5回も歩き回るといわれています。そのためか、老化は、先ず、足から始まるのです。

image106

腱板疎部、:ローテータ・インターバルは、 棘上筋と肩甲下筋の間に存在する隙間であり、関節包が存在していますが、腱板が自由に収縮・伸展・回転するための遊びの部分であり、棘上筋と肩甲下筋のつなぎ目に位置していて、転倒時の打撲などで、捻挫や軟部組織の損傷を受けやすい部位です。

腱板疎部損傷の症状は、若年層の不安定型と、35歳以上の拘縮型の2種類です。
①不安定型は若年層、平均23歳に多発し、主たる症状は損傷部である腱板疎部の著明な圧痛で、外転、外旋位で運動痛が増強します。
その他には、肩のだるさや肩から上肢にかけてのしびれ感など肩の不安定性に起因する訴えが多く、 他覚的には肩関節の下方への緩みが認められます。
XPでは、挙上位で、肩関節のスベリが見られます。

②拘縮型は、年齢層が比較的高く、平均35歳以上であり、肩関節の拘縮=挙上、外旋の可動域制限と運動での疼痛が主な症状となっています。

腱板疎部の損傷は、腱板周囲の組織つまり肩甲下筋や棘上筋の不均衡や鳥口上腕靭帯を含めた関節包や関節上靭帯や滑液包炎あるいは上腕長頭筋などに影響を与え、腱板の血行障害、加齢による変化、関節包内圧の変化などが加わると、不安定肩や50肩に代表される凍結肩に発展するのです。

治療は、肩甲骨の動きを改善する、後方の関節包のストレッチを行い、前後の緩みのバランスをとることで症状は改善するのですが、保存的治療を十分に行っても肩関節機能の改善の得られないときは、腱板疎部縫縮術が行われ、改善を得ています。
しかし、拘縮型で3カ月以上、放置され続けたものでは、オペで改善が得られることは期待できません。

腱板疎部損傷における後遺障害について

1)腱板疎部損傷では、これまで、全件が非該当になっています。
最近の2例は、腱板疎部損傷をMRIで立証していましたが、それでも非該当です。
おそらく、この傷病名を理解できない調査事務所・顧問医が五十肩と混同したものと予想しています。
訴訟提起で等級獲得を目論んだのですが、被害者側の事情により、断念しています。

⑧肩関節拘縮(外傷後など)(8%)
となっています。

2)8%が外傷による腱板疎部損傷で、肩関節拘縮をきたしています。
腱板疎部損傷が確認できるMRIと診断書があれば、勝訴は確実です。

image104
ヒトの下肢は、大腿骨、・腓骨の下腿骨、足部の足根骨、中足骨で構成されています。

1)下肢の欠損障害
下肢の欠損障害は、以下の3つに分類されています。
①下肢を膝関節以上で失ったもの
②下肢を足関節以上で失ったもの、
③リスフラン関節以上で失ったもの

①下肢を膝関節以上で失ったもの?
ⅰ股関節おいて、寛骨と大腿骨とを離断したもの、
ⅱ股関節とひざ関節との間において、切断したもの、
ⅲ膝関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの、
スクリーンショット 2016-06-13 19.48.43
過去に、右大腿骨頭部から下を切断した被害者を担当したことがあります。
この被害者は、右大腿骨のほとんどを失った結果、義肢をはめ込むソケット部分がなく、義足を装用することができなくなりました。
職業は住職でしたが、両松葉杖に頼ることになり、お墓に詣でてお経を上げることもできず、義足に比較すれば、大きな支障を残しました。
切断肢では、被害者の職業と、それに伴う支障の大きさに注目しなければなりません。

②下肢を足関節以上で失ったもの?
ⅰひざ関節と足関節との間で切断したもの、
ⅱ足関節において、骨、腓骨と距骨とを離断したもの、

足関節以上でも、離断は、1回も経験していません。
スクリーンショット 2016-06-13 19.48.53

③リスフラン関節以上で失ったもの?
ⅰ足根骨(腓骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3つの楔状骨)において切断したもの、
ⅱリスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断したもの、
やはり、離断の経験はありません。
image105
リスフラン関節は、足根骨と中足骨の間の関節で、上図の青線部分です。
日常生活で、動くことの無い関節ですが、ジャンプして着地するときなど、足に体重が掛かるときに、衝撃を和らげる、クッションの役割を果たしています。
スクリーンショット 2016-06-13 19.49.02
2)足趾の欠損障害
image105
足趾を失ったものとは、その全部を失ったもののことで、具体的には中足趾節関節から失ったものをいいます。
スクリーンショット 2016-06-13 19.49.11
いわゆる足趾の切断では、
ⅰ第1足趾の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの、
ⅱその他の足趾では、中節骨もしくは基節骨を切断したもの、
ⅲ遠位趾節間関節もしくは近位趾節間関節において離断したもの、

上記が後遺障害の対象であり、足趾の用を廃したものとして捉えられています。
スクリーンショット 2016-06-13 19.49.18

image100

足関節は、骨と腓骨で形成されるソケットに、距骨がはまり込むことで構成、成立しています。
踵骨は、骨、腓骨と靭帯でつながっており、広義には、足関節は、骨、腓骨、距骨、踵骨の4つの骨で構成され、成立しているのです。

image101

足関節内果とは、骨の遠位端部、内側の梅干し、外果とは、腓骨の遠位端部、外側の梅干しのことですが、これらの骨折に加えて、骨関節面の後縁、または前縁のいずれかの骨折を合併したものをコットン骨折=三果部骨折といい、足関節脱臼骨折の重症例です。

骨関節面前縁部骨折の合併では、足関節の背屈が強制されることにより、距骨が前方に脱臼し、骨関節面後縁部骨折の合併では、足関節底屈が強制されることで、距骨が後方に脱臼します。
交通事故受傷によるコットン骨折では、足関節が大きく内・外転することにより、骨折以外にも足関節周囲の靱帯損傷を合併します。

スクリーンショット 2016-06-13 19.48.28

その結果、骨折の状態や転位の程度により異なりますが、足関節部に痛みや腫れ、皮下出血、外反変形や内反変形など病態は様々な組み合わせとなります。

診断は、足関節の腫れ、圧痛、変形、皮下出血をチェック、骨折は、XPで確定します。
粉砕骨折では、CT、特に3DCTやMRI撮影が必要です。

足関節の運動は、つま先を上げる背屈、つま先を下げる底屈、内側につま先を向ける内転、外側につま先を向ける外転、足を内側に捻る回内、足を外側に捻る回外の4運動です。
通常、自分の足の裏を見る場合、内転・回外・底屈の動きを一緒にさせる必要があります。
実際にトライして、動きを学習してください。
内転・回外・底屈の3つの動きを1つにしたときは内返し、逆に、外転・回内・背屈の3つの動きを1つにしたときは、外返しと呼んでいます。

内側・外側への衝撃により足首を骨折したときは、腓骨の下端と脛骨の下端が骨折し、三角靭帯や踵腓靭帯も断裂して、距骨が異常に内転・外転したりします。

骨折を放置すると偽関節になりやすく、多くはギプス固定が選択されています。
転位のないものは4~6週のギプス固定でOKですが、たとえ1㎜程度の距骨の外側へのズレでも荷重面が変わり関節軟骨が磨耗するところから、麻酔下に整復固定を行い、ギプスをタイトに巻いて8~10週間の固定が実施されています。

転位の大きいものは、他の骨折と同じく観血的にプレートやキルシュナー鋼線等で固定します。
整復不能例は海綿骨ネジ、引き寄せ締結法、プレート固定の適用となります。
三果骨折、コットン骨折後の足関節の可動域の予後は不良です。
難治性疼痛症候群、CRPSカウザルギーを惹起しやすい部位でもあります。

コットン骨折における後遺障害について

1)交通事故では、バイクVS自動車の出合い頭衝突で、お互いにスピードを出している高エネルギー外傷により、バイクの運転者に発症することがほとんどです。

私の経験則では、ほとんどが、健側に比して患側の可動域が2分の1以下に制限される10級11号が認定されているのですが、直近では、足関節の変形癒合で拘縮、強直状態となり、用廃として8級7号、足関節部の挫滅骨折で、やむなく足関節の固定術がなされ、8級7号が認定されたものもあります。
また、空手の有段者で、術後、1年7カ月のリハビリ治療を続け、2分の1+10°で、泣くに泣けない12級7号で示談解決した被害者もおられます。

2)オペ後は、足関節部に荷重が掛からないようにPTB装具を装用して骨癒合を待ちます。

image103

足関節部の免荷を目的としたPTB装具

ギプス固定期間は、通院実日数としてカウントされますが、PTB装具もギプス固定に該当します。
治療先の診断書には、下から2行目にギプス固定期間を記載する欄があります。
退院後、PTB装具で過ごしている期間は、ギプス固定期間となり、通院実日数にカウントされます。
保険会社からは、診断書のコピーを求め、正しく記載されているかをチェックしなければなりません。

3)コットン骨折では、
①完璧な整復
②強固な固定
③早期からの理学療法の開始
これらが、絶対に必要です。
これらの3点がおざなりにされると、
①腓骨短縮
②内果変形治癒
③距骨脱臼遺残
④靭帯機能不全
等々の後遺障害を残すことになります。
主治医はこの場合、どうして変形したかを説明することなく、変形治癒を宣告するのです。
変形は確認ができますが、それでも治癒は、どうしても理解することができません。

2014年1月9日、湘南藤沢徳洲会病院は、国内で初めてALS=筋萎縮性側索硬化症の患者さんに横隔膜ペーシングの植え込み手術を実施したと掲載されていました。

横隔膜ペーシングは、呼吸のタイミングに合わせ、神経や筋肉に電気による刺激を与え、人工的に横隔膜を動かす装置で、これにより、患者さんは、人工呼吸器を外し、気管切開を閉じて退院、自由に喋ることができて、その上自宅での生活ができることになりました。
オペは、腹腔鏡下で実施され、横隔膜に左右2本ずつ電極を植え込んだ後、リード線を腹腔外に出してペースメーカーに接続して完了です。
image99

外部制御装置は、上記の大きさであり、カバンに入れて持ち運ぶことができル画期的なものです。
もちろん、自発呼吸のできない上位頚髄損傷の被害者にも適用できるものです。

レスピレーターに頼る被害者にとっては、福音をもたらすものですが、費用はアメリカFDAによれば、10万ドル、日本円で1100~1300万円、健保の適用はありません。
保険会社にとっては、悩み深い問題です。

image97
仙骨部を裏側から見たイラストで、オレンジ色が仙骨神経です。

少数例ですが、交通事故で仙骨の骨折に伴い、仙骨神経を損傷することがあります。

脊髄損傷の重症度を考えたとき、仙髄損傷では、呼吸筋や足の麻痺はなく、どちらかと言えば、軽症に分類されるのですが、仙髄の損傷で出現する代表的な症状は、足の痺れや筋力低下などです。

胸髄損傷では、感覚消失が代表的な症状でしたが、仙髄損傷では、感覚は残るのです。
しかし、スタスタ歩けるほどの筋力はなく、痺れもあって、動かすことが困難となります。
リハビリを通して、徐々に足の機能を回復させて行くことになります。

仙髄神経根、S2~S4は、排尿調節、排便調節そして性機能に関与しており、この部位の損傷では、膀胱や腸の機能消失により、排尿や排便が、自力ではできなくなり、性機能にも影響を与えます。

脳から伸びた神経は頭蓋骨を出て脊髄となり、背骨の中心にある背柱管を通ります。
頚部で枝分かれした神経、頚髄神経は、後頭部・首、腕、手指へ、
胸の部分から枝分かれした神経、胸髄神経が胴体へ、
腰から枝分かれした神経、腰髄神経は、下腹や臀部、足の前側へ伸び、
背骨の末端、仙骨まできた神経、仙髄神経は、膀胱や陰部、足の裏側に至ります。
各神経の支配領域は決まっており、発症部位から、どの神経が損傷しているかが分かります。

仙骨骨折における後遺障害について

image98

1)骨盤骨折の中でも、仙骨々折では、仙髄神経損傷を合併する頻度が高いのです。
仙骨神経、S1~S4は、梨状筋の前で仙骨神経叢となり、下肢の運動機能を、S2~S4では、排尿調節、排便調節そして性機能を支配しており、さらに、自律神経系からの介入もあって、これらの機能に重要な役割を果たしています。

2)S1/2の損傷では、足関節を自動運動で背屈することができなくなります。
足背は強烈に痺れ、筋力は低下、下肢に筋萎縮が認められます。
針筋電図検査で仙髄神経麻痺を立証すれば、10級11号が認定されます。

3)S3/4/5の損傷では、排尿・排便・性機能に障害を残します。
排尿障害は、泌尿器科でウロダイナミクス検査を受けて立証します。
排便障害も、泌尿器科における肛門内圧検査で立証します。
性機能障害は、男女別、その内容により立証が異なります。
詳細は、「4骨盤骨折に伴う出血性ショック 内腸骨動脈損傷」を参照してください。

いずれも、針筋電図検査で仙髄神経麻痺を立証することが、等級認定の前提となります。

変形性股関節症は、先天性の臼蓋形成不全、発育性股関節脱臼、大腿骨頭すべり症、ペルテス病など小児の股関節の病気、また、痛風や化膿性関節炎などによる炎症を原因としたものが中心ですが、ここでは、交通事故による骨折や脱臼など、外傷を原因としたものに絞って解説します。

image94

①           ②           ③

①股関節の隙間が保たれています。
②股関節の隙間が狭くなっています。
③股関節部の軟骨はすり減り、大腿骨頭が変形し、骨棘が見えています。

股関節に限らず、変形性関節症とは、関節の軟骨部が摩耗し、骨に変形をもたらす傷病名です。
骨盤骨々折では、骨盤輪の連続性が失われるストラドル骨折やマルゲーニュ骨折、仙腸関節の脱臼を伴う恥骨結合離開、大腿骨頭の納まる部分の寛骨臼の挫滅的な骨折、

股関節部では、股関節後方脱臼骨折、股関節中心性脱臼の重症例では、時間の経過によって、変形性股関節症を発症することが予想されます。
軽度な股関節唇損傷であっても、損傷が見逃され、放置されることにより、股関節部の軟骨が広範囲に傷つき、変形性股関節症に移行することが考えられるのです。

症状ですが、股関節は、脚の付け根に位置しており、初期症状では、立ち上がったとき、歩き始めのときに、脚の付け根に痛みを感じる程度ですが、変形性股関節症が進行すると、持続する痛みで、足趾の爪切りができにくい、靴下が履きにくい、和式トイレや正座が困難となり、日常生活でも、長い時間の立ち仕事や歩くことが辛くなり、階段や車・バスの乗降も、手すりに頼ることになります。

股関節部のXP撮影で、確定診断がなされていますが、拡がりを観察するときには、CTが有用です。

治療は、保存療法と手術療法に分けられます。
早期であれば、保存療法で進行を抑えることができます。
鎮痛消炎剤の薬物療法、プールでの水中歩行などによる筋力トレーニング、食事制限による肥満の防止、これらの3点セットが有効です。

中期となれば、骨切り術が選択されています。
骨切り術は、関節近くの骨を切って、関節の向きを調整する、残っている軟骨部に荷重を移動させるのですが、自分の骨を使うので、破損や摩耗の心配がなく、かなりの高い活動性が確保されます。

体重がかかる部分の関節軟骨は消失し、その下にある軟骨下骨が露出する末期となると、骨切り術で改善を得ることは不可能であり、人工関節全置換術の適用となります。

image95

変形性股関節症における後遺障害について

1)人工関節では、
ⅰ超高分子量ポリエチレンやセラミックが普及し、耐久性が15~20年と伸びたこと、
ⅱ無菌手術室により、感染症のリスクが低下していること、
ⅲ変形性関節症の高齢者が増えていること、
ⅳなにより診療報酬が稼げること、
これらを理由として、人工股関節全置換術の件数が急上昇しています。
そして、この程度で全置換術? も、少なからず、見聞しています。

2)交通事故受傷により、股関節部の粉砕骨折、寛骨臼の挫滅的な骨折では、人工股関節全置換術もやむを得ない選択となります。

しかし、中程度の骨折であれば、自分の骨を使用して骨切り術を受けることが優先されます。
自分の骨であれば、破損や摩耗の心配がなく、専門医であれば、高い活動性を確保してくれます。
その後は、プールでの水中歩行などによる筋力トレーニングや肥満の防止に努めれば、股関節を維持させていくことが可能であるからです。
参考までに、体重を1kg減らすことができれば、膝関節の負担は約3kg、股関節に対しては約4kg、階段昇降時の膝においては約7kgの負担軽減ができると報告されています。

image96

骨切り術には、棚形成術、寛骨臼回転骨切り術、キアリー骨盤骨切り術がありますが、いずれも、関節近くの骨切りで、関節の向きを調整し、残存の軟骨部に荷重を移動させる方法が採用されています。

私見では、医大系の整形外科で関節鏡術の実績を誇っている専門医を頼るべきです。
なんでもかんでも人工関節の切りたがり救急病院、医師は避けるべきです。

3)後遺障害等級では、人工関節置換術となると10級11号が認定されます。
人工関節に置換した股関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されているときは、8級7号が認定されますが、この後遺障害は、滅多に残すことはありません。

骨切り術では、症状固定時期を誤らなければ、12級7号ですから、1ランク下がります。
しかし、快適な生活を維持されたいのであれば、1ランク下でも骨切り術を選択すべきです。
専門医を探し出し、セカンドオピニオンで受診することです。

Boo弁が、HPで、人工股関節に置換すると併合9級になると記載していますが、間違っています。

4)さて、変形性股関節症は、交通事故後の2次性疾患ですから、治療中に変形性股関節症となってオペを受けることは少ないのです。
示談から3、5、長ければ10年近くを経過して、オペを受けることが想定されるのです。
であっても、人工関節置換では、8級7号、もしくは10級11号が認定されることになり、前回の認定等級との差額を請求しなければなりません。

5)多年を経過しての掘り起こしは、大変面倒なものです。

ⅰ相談するにしても、示談書の控え、前回の交通事故のファイルは、残してあるのか?
ⅱ当時の保険会社は、未だ残っているのか?
ⅲ保険屋さんは、当時の一件書類を離れた倉庫で保管しており、書類を確認に時間を要します?

骨盤骨のストラドル骨折やマルゲーニュ骨折、仙腸関節の脱臼を伴う恥骨結合離開、大腿骨頭の納まる部分の寛骨臼の壊滅的な損傷、股関節部の股関節後方脱臼骨折、股関節中心性脱臼の重症例では、時間の経過によって、変形性股関節症を発症することが懸念されるときは、交通事故に長けた弁護士に委任して示談締結することをお勧めします。

示談書に、「今後、乙に本件事故が起因する新たな後遺障害が発現したる際は、甲乙間において、別途協議を行うものとする。」 掘り起こしで、逃げられないためにも、この文言の記載が必要です。

6)通勤災害、業務災害で労災保険の適用を受けているときは、保険会社との示談締結後に変形性股関節症でオペを受けることになっても、再発申請書を提出すれば、治療費、治療期間中の休業給付が支払われ、オペ後の後遺障害部分の損害にも対応してくれます。

ところが、保険会社となると、これらの費用の負担はされず、あくまでも後遺障害部分の損害を請求するだけとなり、オペとリハビリの治療費は被害者の負担、休業損害も、社保・組合健保であれば、傷病手当金の請求をしなければなりません。

交通事故では、勤務先に遠慮して労災保険の適用を見送る被害者がおられます。
その後に、股関節の後方脱臼骨折で人工骨頭置換術となり、後悔しきりの被害者が複数おられます。

災難は、いつでも、不手際に忍び寄るのです。

7)末期股関節症の、重労働に従事する比較的若年の男性では、膝・足関節、反対側の股関節、腰椎に異常がないときは、股関節固定術の適応がなされることがあります。
固定術により、痛みからは開放されますが、股関節が全く動かなくなり、日常生活上、不自由が多く、特に女性への適応は好ましくないと考えています。
後遺障害等級は、下肢の1関節の用廃で8級7号が認定されますが、お勧めはできません。

image93

高齢化社会となり、材質の改良もあって、股関節などを人工関節に置換する人が増加しています。

それに伴い、人工関節周囲の骨折が増えているのです。
多くは、高齢者で、転倒を原因としたものですが、交通事故による骨折も、増加傾向です。

交差点で信号待ち停止中では、右足は軽くブレーキを踏んでいます。
この状態で、後方から追突を受けると、右股関節には大きな衝撃が加わります。
右股関節が人工関節では、衝撃でステムが下方に沈下し、ステム周囲が骨折することがあります。
歩行者、バイクや自転車VS自動車の出合い頭衝突では、直接的な打撃を原因として、ステム周囲の骨折を発症しています。

ステム周囲骨折は、大腿骨で発症することが圧倒的です。

症状は、局所の疼痛、腫れ、変形であり、歩けなくなります。
XPやCT検査で確定診断が行われています。
骨折に対しては、固定術の実施ですが、人工関節が緩んでいるときは、人工関節の再置換術などが検討されることになり、画像検査では、骨折による人工関節の緩みも評価しなければなりません。

治療は、ほとんどで、オペが選択されます。
骨折に対しては、プレートやワイヤーによる固定が行われ、人工関節に緩みが生じているときは、人工関節の再置換術が選択されます。
粉砕骨折や、人工関節の緩みで骨量が不足しているときは、腸骨からの骨移植も行われています。

ステム周囲骨折における後遺障害について

1)事故前から股関節は人工関節であり、10級11号の加重障害となります。
つまり、10級11号以上の等級が認定されない限り、後遺障害としての評価はありません。

2)粉砕骨折で、腸骨からの骨移植と人工関節の再置換術が行われたときは、再置換術後の股関節の可動域に注目しなければなりません。
股関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されているときは、股関節の用を廃したものとして8級7号、腸骨の変形で12級5号、併合7級となります。
ここから、加重の10級11号分を差し引くことになります。

3)股関節の可動域に制限が認められないときは、10級11号の既往歴に腸骨の変形12級5号を加えて、併合9級となり、ここから加重の10級11号を差し引くことになります。

4)人工関節に緩みが少なく、固定術のみが実施されたときは、ステムの沈下に伴う、下肢の短縮に衆目しなければなりません。
ステムが1cm以上沈下しているときは、短縮障害で13級8号が認定されます。
やはり、併合9級となり、ここから加重の10級11号を差し引くことになります。

5)被害者の多くが高齢者であり、糖尿病、腎疾患などで、再手術が困難も予想されます。
後遺障害の立証に困難が予想されます。

財産分与について⑪ - 弁護士の井筒です。   本日は、扶養的財産分与について説明していきます。  ...2017.8.8