弁護士の井筒です。
相続財産は、複数の相続人間で常に平等に相続しなければならないわけではありません。むしろ、平等に相続することによって不公平な結果が生じてしまう場合があります。
たとえば、①特定の相続人が、被相続人から特別に贈与を受けていた場合や、②特定の相続人が被相続人の財産の維持・増加に貢献した場合などです。
このような場合にまで法定相続分どおりに相続財産を分割するとなると、相続人間で不公平が生じますので、こうした不公平を是正するための制度として、①特別受益、②寄与分というものがあります。
今回は、①特別受益についてご説明致します。
特別受益とは、被相続人の生前に、特定の相続人が特別に贈与を受けることをいい、贈与を受けた者を特別受益者といいます。
特別受益にあたるのは、次の3つの場合です。
ア.婚姻又は養子縁組のために受けた贈与
「婚姻のため」とは、持参金や支度金のことを指し、結納金や挙式費用は一般的に特別受益にあたらないとされています。
イ.生計資金として受けた贈与
住宅の購入資金や、事業を始める際の開業資金、学費(大学以上)などがこれにあたります。
一方、単に生活費の援助を受けていただけであるような場合は、扶養義務(民法第877条)を履行したものと解され、特別受益にはあたりません。
ウ.遺贈
~算定方法~
まず、【相続開始時の財産】+【特別受益財産】を全相続財産(みなし相続財産)とし、これに法定相続分を乗じて、相続人一人当たりの相続分を算出します。そして、そこから【特別受益財産】を差し引いた価額が、特別受益者の具体的相続分となります。
ただし、ウ.遺贈の場合は、相続開始時の財産に含まれていますので、みなし相続財産を計算するときに、遺贈を受ける財産を【特別受益財産】として加算する必要はありません。
なお、特別受益として差し引かないこととする旨の遺言がある場合は、他の相続人の遺留分を侵害しない限り、遺言に従うことになります。
次回は、②寄与分についてご説明致します。